第一部 その① 有賀優紀22歳

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「あら、面接の人?」  扉の奥から姿を現した女性がいった。くっきりした目鼻だちで、上下黒のスーツに白いシャツ姿。百六十八センチある優紀よりも背が高いが、膝上のミニスカートから伸びた脚はたぶん優紀の半分より細く、そして長い。 「あ……はい」 「番号と名前は?」 「え?」 「三次面接の連絡があったときに番号を聞いているでしょ。その番号」 「あっ、はい……、ええと8番です」 「名前は?」 「あ、有賀優紀です」  何だか目力が半端ない女性で、優紀は名乗るだけで気圧されてしまった。 「じゃあ、あなたはそこに座って。番号順に座ってもらっているから」  女性が壁際に並んだパイプ椅子のひとつを手で示した。 「はい。失礼します」  優紀は一礼して指定された椅子に腰を下ろした。小さくほっと息を吐く。  席はすでに八割がたが埋まっていた。全部で三十名くらいだろうか。男性が大半だが、女性の姿もちらほらある。がっちり体形のいかにも体育会系から、細身に眼鏡の文科系まで個性はさまざまだ。  さきほどの女性が、後から入ってきた面接者を席に案内している。  きっと警視庁の総務部か人事部あたりの所属なのだろう。面接者控室の案内を担当しているのだ。  鏡みたいに輝く長い髪。締まったウェストから伸びた長い脚に、華奢な下半身とは正反対のボリュームあるバスト――女の自分から見てもびっくりするくらいの美人だ。         柔道の練習浸けだった優紀は、あまり芸能人を知らない。だがこんな美人はテレビでもネットでも見たことがないような気がする。  優紀は、きびきびと面接者たちに指示をし、ツカツカとヒールをうち鳴らしながら交差する女性の脚を、ぼんやり眺めながら思った。  ても、あんなに短いスカートって警視庁はOKなんだろうか――。
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