第一部 その① 有賀優紀22歳

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「格闘技をやっているとね、闘争本能が刺激されてバトルホルモンが大量に分泌されるの。その結果、肌の毛穴が開いて皮脂が大量に出る。歩き方と屋内での競技それも格闘技と考えれば、柔道しかないでしょ。空手って可能性もあるけど、空手家はO脚にはならないし」 「はあ……」  何と答えればいいのかわからなかった。  O脚は自分でも気にしていたが、優紀はリュウゲハナコに会ってから十分も経っていない。しかもずっと相対していたわけではないから、彼女が優紀を見たのはほんの数分だったはずだ。  それにも関わらず二十二年間生きてきて、初対面の人には誰にもいい当てられたことのない柔道経験をいいあてられるとは――。  さきほどの男性とのやりとりといい、今のことといい、  いったい、どういう人なの。この人――。  優紀は改めて隣に座る美女を見た。何か珍しい生き物でも見ているような気分だった。 「柔道を続ける気なら、まず洗顔をきちんとすること。それとビタミンCをたっぷり取りなさい。食べ物から摂取する量はたかがしれているからサプリがいいわね。一日最低400mg、これを毎日続けるだけで、あなたの年齢ならすぐに効果が出る。アナタも社会人になるんだから、メイクもしないわけにはいかないでしょ。でもその荒れ放題の肌じゃメイクがのらないわ」 「あ、はい。ありがとうございます」  優紀は頭を下げた。  けれども下げてからふと気が付いた。何で私はこんなにペコペコ頭を下げているのだろう。  確かに彼女のほうが年上だけれど、彼女は面接官でもなければ、職場の先輩でもない。あくまでも同じ面接者として対等な立場のはずだ。  だけど彼女には、向き合ったものを自然にひれ伏せさせてしまうような圧があるのも確かだった。  そんなことを考えているうちに、六番の人が呼ばれた。次はリュウゲハナコの番だ。  優紀は胸の内側にもやもやした感覚を抱きながら、そっとリュウゲハナコの横顔を見た。
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