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ヒロイン
ぱんっ!
ドアが閉まったとたん、恵理那は頬を押さえたままよろけて下駄箱にぶつかった。
「ママを悪者にするのがそんなに面白かった⁉」
「ママ、どうしたの」
姉の真優が階段を駆け降りてくる。
「真優ちゃん!」
仁王立ちになって恵理那をにらみつけていた母親は、
真優を見るなりへなへなと座り込む。
真優は嗚咽を繰り返す母の背中をさすりながら、キッと整った顔を恵理那に向けた。
「出てってよ! あんたなんかあのアパートに引きずり込まれちゃえばいいんだ!」
真優に縋りつきながら母親もこちらを向く。
同じ表情をした二人は美しい双子のようだった。
熱い頬をさすり、恵里那はドアを開けるしかなかった。
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