ベジタリアン吸血鬼

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 吸血鬼。フランケンシュタイン。漫画の中のような話に、あたしの頭はクラクラし始める。  しかもなんだって? 血が嫌いでトマトジュースでしのごうとした吸血鬼と、自分が医者をやってるフランケンシュタイン? どこのオンライン小説の設定だ? 「とにかく」  宵凪と呼ばれたフランケンシュタインがあたしを振り返り、継ぎはぎの顔を不器用に歪める。 「お前さんには迷惑をかけてすまなかったな。このまま帰って風呂入って寝て、今日の事は忘れてくれ」 「いや無理でしょ。こんなインパクト強い出来事、忘れられないわ」 「だよなあ。俺がお前さんでもそうなるわ。ほんとこのポンコツ吸血鬼のせいで、すまん」  宵凪医師が深々とため息をつき、あたしに軽く頭を下げた時。  ひやり、と。  あたしの首に背後から手が触れる感覚があって、またも悲鳴をあげそうになる。しかも今度は、明確に、あたしに危害を加えようという、悪意を帯びているのだ。 「ふふ。クライブ。宵凪」  耳元で、蠱惑的な女性の声が囁く。 「ベジタリアン吸血鬼のせいで、こんな可愛い女の子をあんたたちの事情に引き込んじゃって、罪な男たちね」  つうっと、尖った爪があたしの首筋を撫でる。ちいさな痛みの後に、明らかに血が流れ出す感触が訪れた。
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