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「断るわ、そんな暇があるなら勉強でもしていなさい。 恋愛なんて……下らない」
「ぐっ……!」
クレアはもちろん断った、必要以上に厳しく。
その後、フラれた男は崩れ落ちるのも当然で、
「す、すいませんでした……」
「ふん……」
クレアはその男を一瞥して横をすり抜けると、さっさと上履きに履き替え、二階にある二年三組へと向かったのであった。
「おはよー、クレアさん」
「おっつー」
教室に入るなりクラスメイトが挨拶をするがクレアは返さない。
今はそれどころではないからだ。
「ごくっ……」
なにか緊張することでもあるのか、クレアは生唾飲み、呼吸を整えると自分の席へと向かう。
最後尾、窓際の席へ。
そして席に辿り着いたクレアは鞄をわざとらしく音を立てて置くと。
「ごほん」
隣で寝ている、短めの黒髪に黒い瞳のいかにも日本人な男を起こすかの様に、咳払いをする。
しかし男は微動だにしない。
(まったく、五堂ともはるったら。 この私の美声で起きないなんて、怠慢にも程があるわね。 仕方ないわ、ならもう一度……)
そこでクレアは一旦席に着き、めげずに今度は大きめに……。
「うおっほん!」
「…………すぴー」
だが起きない。
五堂ともはるは未だに寝こけ続ける。
「…………」
流石に苛立ったのか、クレアの右眉がピクリと動く。
彼女の顔色を見たクラスメイトが、このままでは五堂ともはるの身に危険が及びそう、と顔をひきつらせる。
が、そんな展開は絶対に起きない。
何故なら、頬杖をついてともはるを睨んでいる彼女の内心は、こうだからだ。
(…………起きなさいよね、私が起こしてあげたんだから。 ……またゲームで夜更かししたのかしら。 本当に好きよね…………ふふ、寝顔可愛い)
まるで殺さんばかりの睨みが嘘のような胸中である。
「ふぅ……」
「「「!」」」
そんな胸中など知るよしもないクラスメイトは、ただの幸せからくる溜め息に、揃っておっかなびっくり。
本人とともはる以外、心がやすまらない。
その時、ともはるに異変が起きた。
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