コオリノオトメとドクシンダンシのカンケイセイ

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コオリノオトメとドクシンダンシのカンケイセイ

 ──とある県のとある田舎町には唯一無二の進学校がある。  それがここ、『桜恫(おうどう)公立学園』である。  田舎といっても田んぼが立ち並ぶ程のド田舎ではなく、発展途上のそこそこ大きな町だ。  そんな中途半端な町の目玉となるこの学園には、様々な学生が通う。  地元で働く為に堅実に学ぶ学生や、東京への夢を馳せる学生など色々だ。  その中でも一際目を引くのが、この女子生徒。 「あっ、クレアさんだ。 相変わらず綺麗だなぁ」 「か、可愛い……。 やっぱりクレアさんって最高に可愛いよな……」  蒼い瞳に流れるような銀色のロングヘアーが特徴的な渡米人。  『クレスティリア=ユングベル』。  通称、クレアである。  聞いての通り、クレアは男女問わず人気者だ。  そんな彼女の1日はいつものあれから始まることになる。 「あ、あの……! クレアさん!」  生徒達から羨望の眼差しを向けられているクレアが校舎に差し掛かった時、一人の男子生徒がクレアを呼び止めた。 「…………はぁ」  ため息を吐いたクレアはとても嫌そうな顔をしている。  否、めんどくさそうに。  だがそれなりに、一応は礼儀を弁えているクレアは、仕方なくその男に問いかけた。 「なんの用かしら。 忙しいのだけど」 「うっ……」  いつもと変わらず冷たい言葉と視線に男子生徒は後ずさる。   しかし、クレアの足を止めてしまった罪悪感があるのか、男子生徒は一呼吸すると覚悟を決めて大声でこう言ったのだ。 「お……俺と付き合ってください! お願いします!」  そう、とは告白である。  クレアは持ち前の美顔のせいで度々告白されているのだ。  彼女が学園に転校してきてからの半年間、ほぼ毎日。  そろそろ男子生徒の半分が散った可能性まである。  そして今日までクレアは恋人を作ったことはない。  だからこの日もクレアの答えは変わらなかった。
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