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幸せの向こう側 ⑩
あらたくんのお母さんは、自分自身が虐待・育児放棄されて育った人で
中学生時代から性に翻弄されていたらしい
多分、寂しかったから身体を差し出せば
その時間だけ優しくされて満たされていたのではないかと思っていると…
二十歳を過ぎて落ち着いて来て自分と恋人同士になったが
幸せを感じれば感じる程
昔の自分が惨めになるようで狂った程泣き叫んだりして何度か入院騒ぎまでした
そんな時に赤ん坊が出来たと
頬を緩ませて僕に伝えて来た
しかし、お腹が出て来ると自分が小さい時にされた事を思い出して
「やはり子供なんて作ってはいけなかった」と言って着の身着のまま飛び出してしまい行方が解らなくなってしまった
と、言う話を聞いた
僕には想像がつかない壮絶な話だった
子供の時から虐待って…
大人が子供を叩くって…
僕の考えを上回る事が多すぎて訳が解らなくなった
「実は、お母さんが育てる気が無いならうちで『あらた』を引き取ろうかと思っています」
慶太が言いきった
「『あらた』?」
「あ、すみません。病院で呼び名が無いと不便って言って仮に付けたあだ名みたいなものです」
「…あらた…いい名前ですね。「新」って書くあらたがいいですね」
お父さんは、僕が考えてた漢字を直ぐに思い付いてくれたのと
響きもいいと褒めてくれて嬉しくなった
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