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幸せの向こう側 ⑪
あらたくんの退院日
やっぱり関わってしまった者としたら見送りたい気持ちになって
また、病院へ来てしまった
昼過ぎに乳児院に行くって聞いていたから
お昼を病院の食堂で食べて新生児室に向かう
ガラス窓にくっついてる女学生
「あっ!」
思わず声がでてしまった
「あっ!お兄さん!!」
そう、お母さんからあらたくんを渡された
女子高生が自分の母親と一緒に見送りに来ていた
「やっぱり見送りに来てた」
明るい声で笑いながら言うから
「来るでしょ、あらたくんの門出だもん」
「あ、あらたくんってお兄さんが名付けたって聞いたよ」
「誰に?」
「婦長さん。あれから婦長さんに相談に乗ってもらってるの」
「相談?」
「うん、私ね」
「うん」
「看護師目指すの!!」
「え!?」
「私ね、あの日、あらたくんの誕生で将来を考えるようになったの。
第二のあらたくんが誕生しないようにと、赤ちゃんが生まれる神秘とか色々思って、自分の実力とやりたい事総合したら看護師かなって…医者には到底なれないけど看護師ならやれると思って」
笑顔で話してくれる
「あら、名付け親と将来看護師が見送りに来てくれた?」
婦長さんが後ろから声をかけてきた
「最後抱いてみる?」
女子高生の子から誘って手の消毒をさせ新生児室に呼び込んだ
「先日は、大変お世話になりました」
女子高生のお母さんが僕に話かけてきた
「いえ、僕は何も…」
「娘を見付けてくれて本当に助かりました。あの子あの日まで本当に喋らないしコミュニケーションも積極的に取らないおとなしい娘でした。
あの日、よっぽどショックだったみたいで
自分の将来に生かしたいって色々調べて看護師になるって自ら進路決めたんです。お二人に見付けてもらえなければ、あらたくん手当て遅くて…って事もあり得たと思います。
私の娘見付けてくださりありがとうございます」
深々頭を下げられた
皆、
あらたくんの誕生で色々思う事があったんだ
そう思うと悩んでいたのが
僕達だけじゃなかったのが何だがこそばゆい
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