幸せの向こう側 ⑫

1/1
前へ
/176ページ
次へ

幸せの向こう側 ⑫

「柾君もあらたくん抱っこする?」 婦長さんから声をかけられた 「はい」 勿論抱っこしたかった 「慶太もしようよ」 手を取った 「ああ」 消毒をし、看護師さんにスマホ渡して 僕とあらたくん 慶太とあらたくん そして三人で写真を撮った 「ね、貴方達の写真あらたくんにも渡していい?」 婦長さんに聞かれた 「はい、構いませんけど?」 僕らは、目を合わせて頷く 「もしも、もしもね、親元で育てられない時、自分のルーツや自分の生まれた時の事 知っている人がいるの知っているのと知らないのじゃ心持ちが違うかなって思ってね」 僕らは、無言で頷いていた 「あらたくん…僕のように幸せになってね…」 あらたくんの耳元で あらたくんしか聞き取れない位の声で囁いた 慶太の大きな手が僕の頭をくしゃくしゃと撫でた 慶太には、聞こえてしまったようだ 僕の手の中には、3キロに満たない人間がいる この子が大きくなる姿を慶太と一緒に見守れればいいなと思っている けど、あらたのご両親… 特にお父さんからは、手元で育てたい意志が伝わって来たし 十中八九おじいちゃんおばあちゃんの力も借りて育てて行くだろうと予想している その方があらたくんも幸せ…だよね あらたくんを見つめながら物思いにふける 慶太が僕とあらたくんを包み込むように抱き抱えた 「俺ら家族と言う枠ではないが、生まれた日に今の時代だと不自然な出逢い方をしたけど同じ時間を共有した者同士…また再会出来るよ。 あらたが俺ら探しに来た時、幸せに生活している事が俺達の使命だね。 柾、俺とおじいちゃんになっても一緒にいてくれる?」 僕の目から涙が溢れこぼれた 「うん、幸せに暮らす。おじいちゃんになっても一緒にいる。 で、あっちでも一緒にいる!!」 僕は、鼻水まで出しながら あらたくんを抱きながら慶太の胸で泣いた あらたくんのほっぺたが 僕の鼻の頭でもわかる位 柔らかで赤ちゃんの香りがし 愛おしい存在な重さを教えてくれた
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加