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鎹 ⑤
ランチタイムが終わりそうとは言え
まだお客さんが居る店内
優里ちゃんとお嬢さんの二人同時に産気付く
「ど…どうしよう久実ちゃん」
僕は、おたおたしてしまう
そんな時会計するサラリーマンの声が聞こえた
「え?列車と電車の追突事故!?電車動いてないの!?車も動かないの!?あ~じゃあ、とりあえず社に帰ってリスケするよ」
「え?」
皆動揺した
「どうしよう…久実ちゃん…
今、二人を僕が病院に送ればいいかと思ったんだけど…」
「救急車もダメね…」
「あっ!女将さん、お嬢さんの通う病院ってどこです?」
「駅向こうの総合病院」
よし、僕は電話をかける
━○○総合病院です━
「産科の婦長さんお願いします」
━失礼ですけどお名前を頂けますか?━
「先日外で赤ちゃん取り上げた柾と言って頂けたら通じます」
━お待ちください━
「もしもし、お待たせしました。婦長の…」
「婦長!!柾です」
「あら、こんにちは。どうしたの?」
「あっ、あっ、あの…」
「落ち着きなさい!!息を吸って・吐いて…どうしたの?」
「今、そちらの産科で診て頂いてる妊婦二人が同時に産気付いています」
「お名前わかるかしら?」
「一人は、高見沢 優里 もう一人は…」
女将さんがメモ帳に名前を書く
「オオスガ エマさんです」
「柾君、二人乗せて来れる?来れなければ救急車呼んで」
「婦長さん、実はそれなんですけど
列車事故があったらしく踏み切りが渡れないみたいで…」
「あっ……わかったわ。今から助産師行かせるから。そこの住所教えて!!お湯とタオル用意出来る?」
僕は、女将さんのメモ帳に
お湯とタオルの用意出来ますか?と
書いて見せた
女将さんは、大きく頷いた
こうしてこの空間がまさかの分娩室になっていくのだ
「柾君!和臣君に連絡!!」
久実ちゃんから叫ばれた
「あっ!わかった!」
僕は、高見沢君に電話をする
「もしもし?柾さん!!初めてですね~僕に電話なんて」
ちょっと浮かれた声で出てくれた
「高見沢君!!落ち着いて聞いて。優里ちゃん産気付いた。列車事故で道が渋滞して車が出せないし、救急車呼べない。病院から助産師が来る。レストランで出産になると思う」
僕は、事実を淡々と伝えた
高見沢君は、言葉を失ってる
「高見沢君、今からホテルの並びにあるイタリアンレストラン来れる?そこに優里ちゃん居るから。早く来て」
あの日あらたくんのママは一人でトイレで生んだ
今日二人の妊婦は、家族に見守られながら出産になろうとしてる
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