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聖なる日 ⑩
「でね、でね、ミキちゃんが可愛かったんだよ。
あっ!!けど、まきちゃんの方が背が高くて綺麗だよ。僕は、まきちゃんの方が大好きだからさっっっ」
あっきーが焦りながら話を替え僕に言い訳するようにすり寄って来てる
ちょっとおかしくて笑っちゃう
だって、浮気しそうになった男みたいだったから
「ちょっと、俺、便所行ってくる」
慶太が席を立つ
「うん、もうじき来ると思うよ」
「ああ、何か店舗のトイレ混んでるみたいだから外の行ってくるよ。
亜紀人、柾任せたぞ」
そう言ってトイレに出た
トイレ近くの小さな窪みに身を置き
スマートフォンのアドレス帳を開く
「えっと、あれ…何で登録したっけ?」
barで登録したのか
恋で登録したのか
伊織さんで登録したのか
斗織さんで登録したのか
焦り過ぎてわからなくなる
「あった!伊織さんだったか」
震える指で電話のマークをタップする
早く・早く・早く
「もしもし?」
3コールで繋がった
「もしもし?伊織さんですか?
慶太です。高橋慶太」
「どうした?何かあった?」
伊織さんの落ち着いた声で自分も落ち着いてくる
「あ、今、東京に居て…昔、柾が拉致した被害者の方とニアミスしているかもしれない状況でして。ご報告です」
一応店舗の方をチラチラ見ながら話をする
「わかったよ。ちなみにどんな状況だったの?」
「僕ら江ノ島に納品に行ってまして、知り合いの子供が東京駅の近くで迷子になって助けて頂いた人達の一人が、多分その方のようです」
「そう、本人達は、会ってないんだよね?」
「はい、ないです。子供に名前を言ったみたいなんですが、その子供名前を略すのが好きみたいで『ミキちゃん』って呼んでて柾は、全く気が付いて無いみたいです」
「わかった。一応、相手の方にも耳には入れておくよ。
出来れば、なるべく早くそこを去ってくれるとありがたいな」
「はい、食事終えたら直ぐに。
相手の方には、
『本当に申し訳ありません
二度と都内には近寄りません、すみません』と、お伝えください」
もう、済んだ事と思ってちょっと浮かれて居たのは事実
相手方のある話なのに気が緩んでいるのは申し訳なかった
「慶太君、大丈夫わかってるから。」
「すみません、後、よろしくお願いします」
そう言って切るのと同時に
柾が店舗から顔を出すのが見えた
手をおもいっきり振って
「来たよ!!」
って呼んでくれる
もしも、彼と再会してしまったら…
お互い支える家族がいるとは言え
今の生活をするのは、柾には無理……だろうな
また、暗い日々からに逆戻りになるだろう
それなら『アクシデント』を回避する
『ニアミス』しない
被害者・加害者
二人の笑顔を守る
「住み分けってやっぱり大切だな」
今日から俺の任務だ
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