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思い出の…
ここへ来て何年経ったかな
もう生まれてからここに住んでいた気分になる
まあ、ある意味新しく生まれ変わった僕…なんだけどさ
最初は、ひっそり山の上の方にいたけど
あの年雪が凄い降って危なくなるからって
集落に降りてって言われて
冬場は、集落に降りるようになったし
何なら夏でも集落に居るようになっちゃって
あまり人と接しないようにしてたのに
集落若者居ないから何だかんだで
便利屋みたいになってる
昔の僕なら怒り狂ってただろうな~
昔の僕を思い出して
ちょっと暗くなった
「柾ちゃ~ん」
畑の方から呼ばれる
「りっちゃん!腰の具合大丈夫なの?」
畑に居るのは、楠 リツさん 80歳
この前、腰痛が酷いって町まで車出した
「この前ありがとね。もうね、痛み無いんよ」
「そう、良かった」
「柾ちゃん、これ、慶太ちゃんと食べな?」
そう言って収穫したばかりの新鮮な野菜を僕の手に乗せて行く
「ちょっと、りっちゃん持ちきれないから…」
そう言うと
「あ~、だね、ちょっと待ってな」
そう言って納屋の中に入って行く
「これ、ぼっ壊れてるけどやるから沢山持って行くんだよ」
そう言って僕に持たせた竹籠の中に
ひょいひょい投げ入れてくれる
「りっちゃん、食べきれないからさ~」
「おめえ達若いから沢山食うべ?
ほら、持ってけ」
僕は、竹籠からはみ出そうな物も
抱えて自宅に帰った
「なんだ?柾…芋掘り遠足か?」
良彬さんの意地悪な声が聞こえてきた
「違いますよ。楠のりっちゃんが
町の医者まで連れて行ったお礼って
掘りたてじゃがいもくれたんですって!
あ、良彬さんもらってくれません?」
「久実ちゃ~ん、柾がじゃがいもいるかって~」
玄関先から声をかけると
「加工したらちょ~だ~い」
「…だ、そうだ…柾、悪りいな
あ、俺、お前のポテサラ食いたいわ
ポテサラ一丁~」
あ~もう、この夫婦………
「喜んでー!」
僕は、居酒屋風に返した
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