最悪な一日  理想的な家族1-こころ

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 月山さんはゆっくりと資料を見ると、口元を綻ばせた。 「よくなりました。ありがとうございます」 「いえ、こちらこそ、すみませんでした。いつもご迷惑をおかけして」 「え?」  月山さんが心底不思議そうな顔で、聞き返す。 「わたしのミスが多いから、わたしに言うんですよね?」  チームの人間なら、誰でもいいはずだ。修正するのは、誰だってできる。 「違いますよ」  月山さんは怒ったように言った。 「篠山さんが一番丁寧に仕上げてくれるからです。こちらの言い分をきちんと聞いて、こちらの思い通りのものに仕上げてくれる。僕ほど細かい要求を聞いてくれるのは、篠山さんだけです」  こころは吹き出しそうになった。  月山さんは自分が細かいと分かっているんだな。  しかも聞いてくれるのがわたししかいないと知って、わたしに頼んできていたのか。  要するに、なんでもやってくれる便利屋扱いではないか。  だけど、悪くない。 「月山さん」 「はい?」 「今度ごはん奢って下さい」  月山さんは一瞬真顔になり、その後ふわりと笑った。 「いいですよ。何が食べたいですか?」
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