ホワイトムスクの桜日和

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「そうか、それが気持ちいいのによ」 と椎名先生は言うのだが、未だにそれが理解出来ない。 まあ、こればかりは女性と行くのが難しい事もあるのだろう。 今まで三度誘われたがすべて断っている。 三顧の礼にも応じなかったという事になる。 「あら、気持ち良いですよ。行ってみると新しい世界が開けるかもしれないですよ」 と上杉さんは言っていたが、私は家の風呂で十分だ。 ふと書斎の応接テーブルの上に置いてある文庫本を見付ける。 北川悦吏子先生の『運命に、似た恋』。 どうやら上杉さんが置いて行ったモノらしい。 これはもしかすると上杉さんが私に恋愛小説を書かせたいがための策略なのかもしれない。 パラパラとその本を捲ってみる。 到底私には書けない文章で、北川先生の素晴らしさを感じる。 大人の純愛物語。
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