ホワイトムスクの桜日和

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「おかげで私は、こんな豪勢なお弁当にありつけた訳ですね…」 上杉さんはお造りに醤油を垂らして口に放り込む。 「三千五百円の仕出し弁当ですよ」 高級料亭のお弁当でもそんなにしない筈なのですが、宴会用のお弁当となるとやはり値段も凄い。 「無駄にも出来ないし、かといって会議室で食べるのも味気ない気がするじゃないですか」 確かに。 会議室で食べるってのも勿体ない気がする。 「食事の味の八割がシチュエーションだと思うんですよね…」 八割がそうであるならば、料理人の立つ瀬がない気はするが…。 「ほら、母親の作ったお弁当も、普段教室で食べるより、遠足の時の方が美味しかった気がしませんか」 なるほど。 それはあるのかもしれない。 「コンビニのおにぎりだってそうですよ。車で移動しながら食べるのは単なる栄養補給的な扱いですが、落ち着いた公園で食べると、それはちゃんと食事をした気分になれるじゃないですか…」 私はお弁当を食べながら、上杉さんの話に頷くばかり。 今日の上杉さんは少々ご立腹で、良く喋る。
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