第4章 雨降って地固まる

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晴れて恋人同士になれた私たちはあまり会えなかった夏休みを取り戻すように遊びたい。しかし、文化祭が迫っているのもあり学級委員長の私は森崎君とあまり会えずにいた。文化祭の準備に追われていた私だったがクラスの出し物が展示ということもあり文化祭当日は二人で回ることができる。 「クレープじゃん! 食べたい」 そういって森崎君の袖を引っ張りクレープの屋台に並ぶ。 「ねえねえ、何にする?」 「俺は定番のチョコバナナかな」 「じゃあ私はイチゴにしよっと」 私たちの順番がきてそれぞれ注文する。座ってゆっくり食べようと近くのベンチに移動する。 「これすごくおいしい」 「こっちもおいしいぞ、一口食べるか?」 「食べる! じゃあこっちもどうぞ」 お互いに一口ずつ交換して食べる。 「おいしいね」 「ああ、口にクリームついてるぞ」 そういって森崎君が私の口についたクリームを取って食べる。 「ありがと」 少しドキッとして付き合っているんだと改めて実感した。 クレープを食べ終わった私たちはまた屋台を見て回ることにした。 「次はあれ食べないか?」 森崎君が指さした先にはロシアンたこ焼きと書いてあった。 「いいね、じゃあ私は辛いの引いたとき用の飲み物買ってくるね」 森崎君はロシアンたこ焼きを、私は飲み物を買ってさっき座ったベンチへと戻る。 「じゃんけんぽん」 私はパーを出し森崎君はチョキを出した。じゃんけんで負けてしまった私からロシアンたこ焼きを食べる。辛いものが苦手なのもあり私の心臓は爆発寸前のような音を立てる。そんな中一つ目のたこ焼きを口に運ぶ。たこ焼きを口に入れた瞬間広がるソースの香りとトロっとした触感がとてもおいしいたこ焼きだった。一つ目はセーフなようだ。 続いて森崎君がたこ焼きを口に運ぶ。こちらもおいしいらしく森崎君は親指を立てる。 その調子で食べ進め、最後の二つになった。 「最後の二つは同時に食べようよ」 「じゃあ行くぞ、せーの」 森崎君の合図で同時にたこ焼きを口に放り込む。一呼吸置いた次の瞬間森崎君の悲鳴にならない声が聞こえる。 「からっ! 飲み物ちょうだい、死にそう」 そんな森崎君を少し面白く思いながらジュースを手渡す。 「すげーからかった」 そういって舌を出す森崎君がとてもかわいく見えた。 食べ終わった私たちは校舎の中を見て回ることにした。校舎に入って2階に上がったところにはiPhone発売日のような行列ができていた。どうやらお化け屋敷が人気らしい。楽しそうだと私たちもこの列に並ぶ。行列のわりに回転率はいいらしく次々と聞こえてくる悲鳴にドキドキしているうちに私たちの番になる。 「ではこのお札を決められた場所に置きながら進んでいってくださいね」 説明を受けた私たちは中に入る。中はひんやりと肌寒い風が吹いていてろうそくのような小さな明かりしかなくとても薄暗かった。 少し進んだところにお墓がありそこにはお札がたくさん置かれていた。一枚目は森崎君がお墓に置きに行く。森崎君がお札を置いたと同時に背後からバンと大きな音がした。 その音にふりかえると後ろからなたのようなものを持った人が追いかけてきていた。 「きゃあ!」 短い悲鳴を上げて森崎君にしがみつく。そのまま森崎君を引っ張って次のエリアに進んだ。 次のエリアではベッドにお札を置くらしい。今度は私がお札を置きに向かう。ベッドに近づきお札を置こうとした瞬間足首を冷たい何かに触られる。 「うわぁ! なに?」 下を向くとベッドの下から手が伸びていた。驚いた私はお札を投げ捨て森崎君のほうへ逃げる。 その後もいくつかのエリアでお札を置いて最後のエリアに向かった。 最後のエリアには棺桶がたくさん置かれていてとても不気味だった。一番手前の棺桶の前にお札を置こうと森崎君が近づくとすべての棺桶から一気にゾンビが起き上がってきた。あまりの光景に私は声も出せず腰を抜かしてしまった。 「大丈夫か? 立てる?」 私は頭を横にこれでもかと振る。すると森崎君が私を抱き上げそのまま出口へ向かう。 お姫様抱っこされてお化け屋敷から出るときあまりの恥ずかしさに顔がゆでだこのように赤くなるのを感じた。 休憩所で少し休んだ私たちは占いの館に行くことにした。 中は薄暗くなっていていくつかの個室に分かれていて、そのうちの一つに通される。 そこには数珠をジャラジャラとつけた女の人が座っていた。 「ではまず名前を教えてください。」 「矢野紗知です」 「俺は森崎駿人です」 「何を占いますか?」 「恋愛運でお願いします」 「わかりました」 そういった女の人はカードを机の上で混ぜ合わせる。 そこから数枚選びめくって並べる。 「お二人の相性はとてもいいですね」 「何か困難を乗り越えた後ではないかとここには出ています」 「すごい、当たってる」 「ああ、大変だったもんな」 「しかし今後、何かの終わりが近づいてきていると出ています」 「終わりって、別れとかですか?」 「それはわかりませんが近いうちに何か終わりを告げるかもしれません」 お礼を言って占いの館を出る。 あたるのかもわからないが最後の言葉が私の心の中に引っかかる。 「終わりがちがづいてるって言われたけどなんだろうね」 「んー、なんだろうな」 何のことかはわからなかったが私たちが望む幸せな終わり方だといいなと思った。
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