第2章 何気ない日々

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今度の週末、今日は森崎君とボウリングに行く約束をしている。 13時前に駅前につくとほどなくして森崎君が歩いてきた。合流してからボウリング場を目指す。 「何もってるの?」 「これか? ボウリングシューズだよ」 「そんなの持ってるってことは上手いんだね」 「ただよく行くだけだよ」 ボウリング場につくと森崎君が申込用紙を記入する。 「委員長の名前ってなんていうんだ?」 「え、矢野紗知だよ! 苗字すら覚えてなかったの?」 「ごめん、全然覚えてなかった」 謝りながら森崎君は申込用紙にさちとひらがなで書く。そのまま受付を済ませた私たちは私のレンタルシューズを借りてレーンに向かう。 マイシューズに履き替えた森崎君は13ポンドの球を持ってきた。持ってみるととても重くて両手で持つのがやっとだった。 「これすごい重いね、私は何ポンドくらいがいいと思う?」 「んー、女子なら8ポンドか9ポンドくらいじゃないか」 そういわれて8ポンドと9ポンドの球を持ってみる。9ポンドは少し重かったので私は8ポンドにした。 二人とも準備を終えて森崎君が初めに投げる。森崎君の投げた一投目の球はきれいな弧を描き真ん中のピンから後ろまですべてのピンをなぎ倒した。するとポップなアニメーションとともにストライクと画面に表示される。 「すごい! ストライクじゃん!」 「そうでもねえよ」 はしゃぐ私に森崎君は照れくさそうにそう答えて椅子に座る。 「私も頑張るぞ」 そう意気込んだ私の一投目は見事に左側にそれてガターに吸い込まれた。 「ちゃんと真ん中のピン狙ったのに」 「ピンを直接狙うより床に書いてある三角を狙うといいぞ」 「そうなの? やってみる」 私は森崎君のアドバイス通り床の三角を狙い二投目を投げる。少し左にそれたもののガターには落ちず4ピンを倒すことができた。 「ほんとだ! すごいね、森崎君」 「だろ」 その後も森崎君はストライクやスペアをよく出していたが私のほうはガターを連発するなどさんざんなスコアのまま最後の10回目となる。 「頑張れ!」 「ああ」 短く返事をした森崎君が一投目を投げる。そのボールはまた真ん中に吸い込まれストライクを取る。二投目三投目では難なくスペアをとった。 「次は委員長の番だな、頑張れよ」 「任せてよ」 私は緊張しながらも真ん中を狙い一投目を投げる。私の投げた球はまっすぐに真ん中のピンに向かい次々とピンをなぎ倒していく。そしてポップなアニメーションが流れストライクと表示される。 「やったー!」 「やったな」 大はしゃぎの私は森崎君のもとに走っていきハイタッチをしたとき勢い余って森崎君とぶつかってしまう。 「いてて、ごめんね」 「大丈夫か?」 「うん、勢い余っちゃった」 少し冷静になった私は二投目三投目も投げたがこれは見事にガターに吸い込まれる。 投げ終わった私たちはストライクの余韻に浸りつつかたずけを済ませ駅へ向かった。 私たちはそれからも学校ではあまり話さないものの週末に会ってたくさん遊んだ。そんな何気ない日々がこんなにも楽しいと思ったのは初めてだった。あの時死ななくてよかったかもと少し思った。
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