第四話:しがない音楽家

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『雪見月』への帰り道、私のスマホが鳴動した。 「もしもし?」  電話越しで顔は見えていないはずだけど、にやけているのをばれないように、なるべく冷静にそう言った。 「なんて幸せそうな声! グッジョブ! コウヅキ!」  もしもしって言っただけなのに、そんな事を言っている。 も〜!ほんと恥ずかしいっての!  私が次の言葉を出せずにいると、 「コウヅキ~来てるわよ~!」  そう、電話の向こうで言うルルだった。  ヒールのお仕事だよね。 間違いなく。 『ヒール(heel)ペインキラー(鎮痛剤)を行う。それがヒール(悪役)の仕事。 疼痛緩和のためのペインキラー(鎮痛剤)は連鎖する。 そうやって、一人を救うことが出来れば、その救いは周囲に波及していく。 一人を救うものは世界を救うってね。 それがきみの仕事なんだよ』  アレイグラさんが言っていた言葉の意味が、今ならよくわかるよ。  さて、早く戻って、全部ひっくるめて乗り越えますか!  私たちのいる場所は、 中京区の寺町通六角下る(てらまちどおりろっかくくだる)。 雑貨屋兼お土産屋のお店の名前は、 『雪見月(ゆきみづき)』 京都観光ついでに、ぜひ寄ってみてね! いろんなお土産物が揃ってるし、それにヒール案件なら、私ががつんと解決するから!  来てくれるのを待ってるね!  また会おうね!  おわり。
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