第四話:しがない音楽家

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 ……でもしかし、どうにかしなきゃね……。  そう言えば、アレイグラさんはなにもないところからリップを作り出していたよね。 それに、イタリアに行く前に、 『きみが本当の意味でヒールになれば、いろんな意味でヒールなるための媒体は必要なくなる』  とも言ってたわよね。  てことはつまり……  …………    くっそー! これは試練なのね! アレイグラさん!! あんたって人はさ!  ……って、ひょっとしたらアレイグラさん自身がヒールの能力者だからこそ、それが変に発動しないように言葉を曖昧にしてるのかも……。 とか、ちょっと思いつつも……。  それにしても! いつだって言葉不足すぎるんだよ!!  しかしこいつはヤバいなぁ…… リップの代わりになるようなもの……  代わりになるもの……。  そう考えて、私は右手に頬を乗せて、倉庫のなかをウロウロぐるぐる回っていた。 その時に、急に電球に光が灯ったように閃いたんだよね。  私の場合は、ヒールの能力では主に言葉を使う。だから口に塗るものが必要なのかも。リップはつまり口紅なんだってことだよね。 ならば、それって多分、儀式的に塗るって感じのもので良いってことだよね。  まぁ、やるだけやってみないとね。
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