第四話:しがない音楽家

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 「えっとさ、ホマレだよね?」  すると、どこか機械音的というか、トイピアノ的な音色を思わせる、(さえず)りを聴かせてくれた。 でもそれだけではない、音楽的なニュアンスが含まれていて、とてもきれいな鳴き声だ。 まるで、ホマレのフルートの音色のようにも聴こえる。  なんて鳥なんだろう? そう思ってクークルの画像検索機能を使って調べたのだけど、その姿は画像には映らなかった。 だから、くちばしの形やその姿と鳴き声からいろいろ検索してみて、しばらくしてから十姉妹(ジュウシマツ)と言う小鳥なのだと言うことにたどり着いた。  江戸時代に中国から輸入されたものを品種改良して生み出された鳥で、おとなしくて優しい性格で、同時に何羽か飼っても喧嘩せずに生活し、かごの中で身体を寄せあって群れる習性があるのだそうだ。十姉妹とは、そんな生態から付けられた名前なのだという。  さらに、人の手の中で繁殖してきたから、自然界では生きられない。 翔ぶ力も弱く、食事を自らの力で用意して生活することも難しいのだそうだ。  おとなしくて優しい性格。そしてきれいな音色の囀り。そこはホマレそのものだ。  またきれいな囀りを聴かせてくれたのだけど、注意してよく聴いてみると、ホマレが何を言っているのかが判ってくるから不思議だ。 『うん。 そうだよ。 私、ホマレだよ』 確かにそう言ってくれた。  白い翼に背が茶色。 きれいな囀りを聴かせてくれる、このとても小さくてかわいい小鳥が、ホマレのアザーセルフなんだ。
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