第四話:しがない音楽家

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 そんななか、ホマレは母の意思を継ぐように、楽器を構えるようになった。 最初は子ども用のフルートを見よう見まねで構えていたけど、その時から様になっていた。 私自身幼いながらに、あぁ、ホマレはきっと大人になってもその道で生きていくんだろうなって感じていた。  だから、保育園の年長組になってからは、時々レッスンに行っていたし、小学生になってからは、学校のあとの学童保育を休むときには音楽のレッスンに通っていた。  この頃から、ホマレの音色はとても柔らかく優しかったのだけど、同時にとても美しくて魅力的だった。私も演奏できたらなって思って、ホマレと一緒の音楽教室に、小学校の低学年から高学年のはじめまで通ったんだ。  まぁ、高学年になる頃には諦めちゃったんだけどね。だってあの音色は、ホマレだから出せるものだって事に、同じ楽器をやったからこそ気づいたんだ。  だから、私は、近くでホマレの音楽を応援する側でいいやって思ったんだ。 でも、私が応援する側になったのには、もうひとつ理由があった。  ホマレが三年生の頃、小学校に入学して通い始めた私だったのだけど、確かあの頃は、私のホマレにちょっかいを出す男の子がいたんだよね。  名前は……  え~っと……  なんて言ったっけ……  これは、ひょっとしたら、記憶の抑圧ってやつなのかも……  とか思いながら……。
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