第四話:しがない音楽家

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 そうして、いくらか過ぎた頃の事だった。  コウトは誰よりも早くに登校し、ホマレの下駄箱の中身、もちろんそこには靴しかないのだが、それを確認して、上履きのバレーシューズの踵部分の名前がきれいに見えるように並び替えてから、ホマレの教室に行き、ホマレの机を除菌シートできれいに拭くといったことをしていたようだ。  最初は純粋にが募ったことによる気持ちだったのだろう。 ただ、その好意は自らの人には見せない、独りよがりの何かを内包して、いつしか過剰になっていった。  やがて、ホマレの机やロッカーの中のものを確認するようになり、友人関係にまで干渉し始めた頃には、みんなが噂するようになっていた。 ホマレは困惑していたけど、そんな姿を見て、コウトは逆に喜んでいた。  ……結局、学年の教師達にも知られることとなり、教師からの指導で、コウトは自らのその好意が、ストーカーと呼ばれるものだということを知った。 ホマレはというと、自身が感じていた困惑は、怖さを伴った不快感だと言うことを知ることになった。
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