第四話:しがない音楽家

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 コウトはその時期から、六つ年上の男性と付き合っていた。それがカインだったそうだ。  ホマレを指導していた教授の息子が、あのカインなのだそうだ。  カインは、音大生もしくは音大卒業生向けのクラシック系演奏会の斡旋という仕事をしていた。 父が大学教授なのだから、大学側が公には認めていないものの、そういうルートもとりやすいということなのだろう。  ただ、カイン関係のものは、カイン自身の人柄に問題があり、対人関係の問題に発展したり、ギャラに問題があったようだ。だから、トラブルが絶えないことから、学生から敬遠されることも多かった。 その辺は、カインのガラの悪さが、彼の仕事の仕方を物語っているようだ。  そのうちに、教授に目をかけられているホマレにも声がかかり、息子の仕事の手伝いをアルバイトがてらやってみないかと言われ、本当に一度だけのつもりでホマレはそれに応えた。  
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