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演奏場所としては、身寄りのない子どもたちの施設での演奏だ。世間ではあまり耳にしないかもしれないけど、親がいない。もしくは、親が何かしらの理由で育児を放棄する場合が実際にあり、その子たちが18歳を迎えるまで暮らす場所がある。
その中には、何かしらの障がいを持った子たちもいる。現状を憂いて、育児を放棄した親を責めるのは簡単だ。でも、眼の前の切迫した問題として大切なのは、そこじゃない。責めたとしても、親が暖かい環境を与えてくれるわけでも、笑って迎えに来てくれるわけでもない。
そんな事よりもまず、安心して眠れて、ご飯が美味しいと思える環境があって、ちゃんと深い愛情をくれる人がいて、心から笑える空間が必要だということだ。
そこには、同じく学生のピアニスト、亜小鮎 蘭と行く事になったそうだ。
ピアノ科のランは、とてもさっぱりしながらも優しい性格で、ホマレとよく気が合っている。
卒業してからも、ランの名前をよく聞くから、いまでも仲良くやっているようだ。
私自身も、何度かランと会ったことがある。
とても女性らしく、衣服にもアクセサリーにもこだわりがある。穏やかな雰囲気なのに、いざピアノを演奏しはじめるとその内面に秘めた情熱が弾けるような、そんな感じの女子だ。
ランをみていると、私はなぜピアノをしてこなかったんだろうって思う。
やっていれば、日々ホマレがやっている練習の手助けも出来たのに。
ともかく、ふたりの優しくて美しい音色と、その容姿から、子どもたちにすぐに受け入れらて、演奏会は大成功だった。
何よりも二人の演奏は、子どもたちの心に何か暖かいものを灯したのだろう。
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