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そうして、一度だけのつもりだった演奏は、あっという間に評判が広がって、子ども向けの演奏を隔週でどこかの施設ですることになっていった。
そんな感じで、いつものようにふたりで演奏していた何度目かの時に、斡旋だけして、その場には現れないはずのカインが、ちょくちょく姿を表すようになったらしい。
その何度目かの時に、カインは恋人のコウトを連れてきた。
コウトは、カインのその内側に、かつて自分自身が抱いていたホマレへの気持ちを見つけてしまったのか、そこは定かではない。
コウトは、カインにホマレに関する事を、よくない感情を込めながら言ったのかもしれない。恋人をとられまいとして…。
ただひとつ確実なことは、カインがコウトを連れてきたあの時から、カインのホマレに対する態度は変化した。という事のようだ。
カインの場合、最初はただ純粋にホマレへの音楽に対する傾倒だったのかもしれない。
それはモニターの中に映るヒロインのように、その音楽性と美しさに憧れながら、とても身近に感じながらも、どうやっても手が届かない存在だったのかもしれない。
だけど、どんどんホマレに惹かれていく恋人を前に、最も焦燥感を抱いていたのは、他ならないコウトだったのだろう。
……だからこそ、コウトのその鬱積した感情は、あの時のように破滅への道をたどらせたのかもしれない。
そのコウトの感情は、恋人であるカインに何かを吹き込んだ事によって、ガス抜きとして汚してもよい存在として認識されることになった。
……そう言うことなのかもしれない。
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