第四話:しがない音楽家

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 そうして私とホマレは阪急電車に乗って出かけることにした。  私を座席に座らせてから、手すりを持って私の前に立っていホマレが、不意にこんなことを言った。 「今度さ、いちきゅうにぃはちビルのイベントで、カエルの王子さまの現代風劇をやるんだよね。その合間で、私がいろいろとバリエーションを変えて、優しく豊かに演奏するんだ。 あの場所には、フルートの音色が一番良いんだってさ」  そうなんだ。 それ、すごく面白そうじゃん! フルートの音色って言ってるけど、それってホマレの演奏が認められてるって事なんだよね。 「ねぇ、知ってた? カエルの王子さまは、お姫様にキスをしてもらうと、かけられてた魔法が解けるんだって。そんな感じでさ、十姉妹のあの時に試してみても良かったかもね?」  なんて事を、ホマレは真っ赤な顔をして言うから、私まで照れてくる。  てかなに? このホマレらしからぬ発言は? あの時のことは、そんなことじゃ解けないよ。あれはそう言った類いのことじゃなくて、ヒールの仕事を遂行することでようやく解決できることなんだから。 でも、ホマレはそれもわかってて言ってるんだろうね。  つまり、ホマレはキスしたいってことなのかな? あ~! もしそうならさ、なんだかてれてれきゅ~だね!
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