第一話:はじまり

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 ここは、もともとCDショップだったものをカフェに改装した店舗だ。地上の目に見えるガラス張りの雰囲気もいいけど、地下一階の隠れ家的なスペースで、派手すぎずに流れるジャズを聴くのもまたいい。  私はバッグから金魚柄の水色の扇子を取り出して軽く扇ぐと、店内のよく効いた冷房との効果で、スッと暑さが和らいでいくのを感じていた。 「お待たせしました~」 そう言って、カフェエプロンを付けたポニーテールの店員さんが注文の品を運んできてくれた。  私よりは身長がある。それに私よりは胸が大きい。 揺れるポニーテールを見ていると、こんなに短くするんじゃなかったと今更ながら思ってしまう。  目の前の赤く透き通ったクランベリージュースを一口含み、その冷たい酸味を味わってから、ノンカロリーのガムシロップを入れて、さらにまったりモードになってみる。
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