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『ミズガ、ホシイカ』
ふいにみづちの声が聞こえた。
『ツノヲ、カエスノナラ』
『コノチ、ニ、ミズヲ、ミタシテヤッテモ、ヨイ』
水を満たしてやってもよい……?
そう、契約めいたことを提案してきている。
どうして、そんなことを言ってきたのかわからない。
ただひとつ、わかっていることは、今の自分に残された時間は、あと数秒だろうということだけだった。
賭けにでるしかない。
そう、今までと同じように。
そう覚悟を決め、ゼリーに包まれているような状態のなかで、必死に胸元を開き、角を取り出した。
『ハハハハハハハ』
みづちが勝利したように、高笑いをする。
しかし、クレネは握った手をすぐには開かなかった。
「約束しろ」
必死に呼びかける。
「この星にこれから住む人間を滅ぼさないと、約束しろ。そうしたら、角を返してやる。刀も抜く」
なんだかとても、皮肉だった。
同族である人間に約束を守られなかったというのに、異種の存在にそれを求めているとは。
『ナゼ、ソンナヤクソク、シナケレバ、ナラナイ』
みづちも疑問に思ったようだ。
だが、そう返すということは、約束さえすれば、それを守るつもりがあるからこそだと、クレネはそう判断した。
そこに、交渉の余地があると。
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