- 最終章 - 遥かの時 新しい地

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 まずは、その、手始めだ。  クレネは、指を開いた。  熱を持ち、ずっと震えていたその小さな円錐形の角は、光を放ち始める。  そして角を支点にして、ゼリー状に変化していたものが集まり始め、最後には童子の姿になった。  その額には、神々しく輝く角。  それを視認したと思った次の瞬間、クレネは地表へと着いていた。  だが、硬い地面に激突するはずの身体が、なにかに沈み込む感覚に包まれた。  さっきまでの、みづちの一部だったゼリー状のものとは違う。  そしてすぐに、上昇した。  じゃぶっ。  すぐに、音が聞こえた。  気がつくとクレネは、地表いっぱいに満ちた水……、いや、海の上に浮かんでいた。  音は、自分の身体に水が当たってたてているものだ。 『オマエハ、マタ、ウマレカワレ』  その声と共に、まるでトビウオが跳ねるように、六連星が水面に飛び出してきた。 『ミコ、トシテ、ウマレカワル、チカラ、カタナノチカラ。モチツヅケルガ、ヨイ』 『ダガ、コレカラウマレルトキハ』  みづちの声は、厳しかった。 『ワレデハナク、ヤクソク、タガエルニンゲンヲ、ホロボセ』 「……私に、同族殺しをしろと?」 硬い声になってしまうのは、しかたないだろう。 『ソノヤクソク、ナイナラ、コノミズ、ナクス』 「そんな……!」 『ヤクソク、タガエナケレバ、イイダロウ』  すこし呆れたような言い方だった。  たしかに、言う通りなのだ。  ただ、理屈通りに人々が生きるかというと、それはそれで難しい。  だが、自分が監視者としての役割を請け負えさえすれば、事態が深刻化する前に警告を発したり、代替案を提案したり、やれることはあるだろう。  結局、自分は、賭け続けるしかないのだ。  これまでも、そうだったように。
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