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「わかった」
諦め、ではない。
運命を受け入れることと、諦めることは、似ている点もあるが決して同じではない。
そのはずだ。
そう、信じたい。
「この星で、共に生きていこう。そのための努力をおろそかにしないことを、誓う」
そう宣言すると、水面が一気に泡だった。
まるで沢山の拍手が起こっているようだった。
こんなこと、今までの転生した人生のなかでは、一度だってなかった。
みづちと、わかりあえることすら、想像すらしていなかった。
それはつまり、これからは以前の生をなぞるのではなく、新しい歩みを始める、そういうことになり得るのではないか。
クレネのなかで、そんな希望が湧いてくる。
水に浮かび、見上げると、『マホラマ』が見えた。
着水動作に入っている。
サディが船内に戻り、操作しているのだろう。
新しい星で、新しい方法を。
転生を繰り返し、模索する人生が、また始まろうとしている。
でもきっと、今までとは、違う。
願わくば、そこに、貞義も転生していればいい。
これからは死ぬためではなく、共に、運命を切り拓いてくれるために。
そう、まさに今、この瞬間のように。
やがて、移住船がゆっくりと降下し始める音が、水の上を高らかに響いた。
まるで、祝福のラッパのようだ。
<終>
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