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澪が落ち着くのを、待っていてくれたのだろう。
ちょうど飲み終えたタイミングで小桐が立ち上がり、現場の割り振りを始めた。
今日の予定は、元々は1件だけのはずだった。しかし早朝に知り合いのマンション管理人から、急ぎの依頼が新しく入ったという。
それで、二手に分かれて現場に行くことになった。
「じゃあ、そっちは大谷さんがリーダーでやってくれ。こっちには二人もらう」
一番のベテランであり専務でもある大谷耕三に、小桐はそう指示を出す。そして、自分のほうには中堅の戸越弘樹と三河潤を呼んだ。
これで残りの澪と伊東、それよりは少しだけ先輩の渡辺孝治の三人は、自動的に大谷と同行することになる。
事務担当の瓜生美沙子だけは、いつもの通りここに残って書類仕事と電話番だ。
「でも珍しいですね。ここ1週間くらいずっと、こういうタイプの依頼多くないですか」
バンの助手席に乗り込んだとたん、渡辺がそう言い出した。
運転席にはすでに戸越が座っている。運転手役はいつも決まっているので、誰もなにも言わない。
「言われてみれば、そうだなあ。社長も受けきれないヤツは、知り合いの会社に回したりもしているらしい」
「そこまで多いんですか」
「老朽化のタイミングが重なってでもいるのかね」
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