4『交わる愛と想い』

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****side■板井  唯野の最奥の蕾に指を滑らす頃には、彼は板井との行為にすっかり夢中になっていた。 「板井」 「はい?」  彼の蕾に指を差し込もうとしていた板井は、呼ばれて唯野を見つめ返す。この先の行為を怖がっているのだろうと思いながら。  しかし、 「わがまま言ってもいいか?」 と、問われ軽くキスをした。  唯野は離れていく唇を見つめながら、 「もっと一緒にいたい」 と消え入りそうな声で言う。 「職場だって一緒だし、一緒にいる時間はそれなりに長いとは思う。でも、今まで生きてきた時間よりも、残りの人生は短い。だから少しでも一緒にいたいんだ」  唯野の想いを聞いて、板井はその身体をぎゅっと抱きしめた。  人は多くを求める生き物だ。  好きな人と一緒の時間が共有できることは奇跡に近いのに、同じ時を過ごすうちにその尊さを忘れてしまう。  ただ傍に居られることが、こんなにも幸せなのに。   「だめ……かな?」  唯野の優しい声が好きだ。  穏やかな性格が好きだ。  部下たちを優しく見つめるその目が好きだ。 「だめ……なわけないじゃないですか」  どんなに想っても届かないと思っていたから、唯野に気に入られている塩田に嫉妬した。唯野に気安く触れる黒岩に憎しみを覚えた。そして唯野と仲の良いと言われる、副社長の皇を羨ましいと思っていた。 「でも、本当に俺でいいんですか?」  自信の持てない板井に困った顔をする唯野。 「まだ、黒岩とのこと疑ってるのか?」 「そういうわけじゃ……」  言葉を濁す板井に唯野はため息を一つ着くと、 「俺は、お前に会いたくて家を出たんだ。その途中でアイツから電話が来た。それだけだ」 「俺に会うため?」  板井は彼に送ったメッセージの内容を思い出し、ハッとする。  自分がいるところに来ないかと誘ったのは、確かに自分だ。辻褄(つじつま)は合う。 「お前に会いたいという話を、聞かれただけなんだよ」  そういうと、板井の首に自分の腕を巻き付ける唯野。板井はその背中を優しく撫でた。 「会いたかったんだよ、お前に」 「修二」 「なあ? ここで一緒に暮らさないか?」  それは愛しい人からの嬉しい誘い。  異論などあるはずはない。 「傍に居て欲しいんだ」 「喜んで」 ** 「ほんとに後悔しませんか?」  指で充分に(ほぐ)したそこに自分自身をあてがいながら、唯野に問う板井。 「なんで、後悔なんかするんだよ」 「初めてなんでしょう?」  そこでの快感を覚えてしまったら、もう後へは引き返せない。  別れるつもりなど毛頭ないが、もし他の人とそんなことをしようとしたら許せる自信はなかった。  もっとも、唯野が浮気をするような人間だとは思っていない。 「お前の指……良かったし。後悔なんてしない」  唯野は頬を赤らめ、恥かしそうに言う。 「板井としたいんだよ。だから、やめるなんて言うなよ」 と、続けて。  板井は瞬きを一つすると、唯野に口づけながら腰を進める。  もう後戻りはできない。 「んんッ……」  唇を離すと、ぎゅっとしがみついてくる彼が愛しい。  年上で、上司で、ずっと好きだった人。 「あッ……板井ッ」 「ダメ。やめない」  ゆっくりと腰を押し進めていく板井に、胸を仰け反らせる唯野。 「好き……好きだよ」  縋りつくような声。 「愛していますよ、修二」  板井は愛しいというように耳元で囁いたのだった。
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