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ここは、私たちの通う高校のそばにある大きな公園だ。公園といっても、木が生い茂ったなかに遊歩道やベンチがあるだけの、とくに面白みもない場所。
それでも、高校生にとっては貴重な寄り道スポットで、友達や恋人同士が座りこんで話をしているのをよくみかける。
そんな公園を今日歩きながら、私からコタに別れを切りだしたのだった。
そっか。わかった。いつもの口角でそう言ったコタの視線は、私たちの間にあいた、ひと一人分くらいの空間に落ちていた。
なにかいいわけを言わないといけない気がして、焦った。
「ごめん……まだ一ヶ月くらいしか経ってないのに。でもなんか、友達だったときのほうが自然だったっていうか、付き合うっていうのがなんか違ってて――」
「うん。そんな気がしてたし、わかったよ。それより、ちょっとこっち来て」
それより!?あまりにも淡白なコタの反応に、私のほうがショックをうけた。
それを知ってか知らずか、コタは「こっちこっち」と言いながらスタスタと遊歩道の脇道にそれていく。
道なき道を少し歩くと大きく横倒しになった朽ち木があり、コタに目印だと教わった。
左に曲がると斜面に埋まるようにボロの柵があった。
「どこにいくの?」
コタの背中に問いかけた。柵に伸ばしていた手を止めて振り返ったコタは、さっきと同じ表情をしていた。
「リッコ、誰かに見られたり、噂されたりするの、すごく嫌なんだろ。だから探したんだ、二人になれる場所」
「え」
コタにはお見通しだったのだ。恥ずかしくなってうつむく私の頭上から、コタの笑みを含ませた声が降ってきた。
「責めてるわけじゃないよ。少しだけ、話そうよ」
そして柵をキィと開けて、私たちは二人きりになった。
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