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「あ~……え~っとぉ……おねーさん、こんな所で何してンの?」
「ハァ!?」
ニッコリ笑いながら、この状況に似つかわしくないほどの明るい声で彼はそう云った。私はものすごく険しい顔をしていたと思う。
「すごい顔ですね」
「この状況……見てわかりませんか?」
「まぁ、大体は予想つきますが……」
苦笑い混じりにそう云った彼に、私はものすごく低い声とじとっとした目でそう返す。私のドスの効いた声にたじろいだ彼は、人差し指で頬を掻きながらそう云った。
「ならどっか行ってもらえませんか?」
「いや~……それはちょっと……」
気が散ると云うか、なんとなく誰かに見られていたくないと思った私はそう彼に伝える。だけど彼は何か歯切れの悪い言葉でこの場に居座り続ける。
「私的に迷惑なんですけど?」
「いや~……このままだとオレ、自殺幇助とかの罪になりそうじゃないですか」
「ハァ?」
少し視線をそらせて気まずそうにそう云った彼の言葉に、私は思わず素っ頓狂な声が出た。
(何云ってンの、この人……)
理解不能な彼の言葉に、私は呆気にとられてしまう。
「このままおねーさんが飛び降りるの見てたら、罪になっちゃうでしょ?」
「……なりませんよ。他に誰も証人いませんから」
「2人切り……ですね」
少し照れるようにはにかんだ彼に、私はもう返す言葉もなかった。
(あぁ……いるんだ。話の通じない人って……)
私は呆れながらも、ふと足元に転がっていた手のひらサイズの硬い何かの欠片を拾い上げた。少しそれに視線を落としていると、目の前の彼はキョトンとした顔で私を見つめていた。そして私は、欠片を持つ手をスッと彼の方へと向ける。
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