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「オレね……死んでるんですよ」
「死……!?」
「いや~……最初は驚きましたよ。オレのこと見えてるとは思わなかったんで」
「あぁ……」
初めて私が彼を認識した時の事を云っているのだろう。
しかし、死んでいるとなると彼は幽霊? 私に霊感はないと思っていたんだけど……
死ぬ間際に何かが開花したとか……?
「てか、本当に……ユーレイ……?」
「試してみます?」
先程の現象を目の当たりにしておきながら、どこか疑いの目を向ける私に目の前の彼はそう云ってスッと手を差し伸べてきた。
危険なこの場所から、安全な自分のいる場所への誘導なのかもしれないけど……死ぬことより好奇心に負けてしまった私は、屋上のヘリから足を下ろすとゆっくりと彼の方へと歩み寄った。
彼は少し小首を傾げながら、上げていた手をクルッと回転させて手のひらを上に向ける。導かれるようにして私は、彼のその手に自らの手を重ねようとした。
「ッ!?」
手が重なる……と思った瞬間、何の感触もなく私の手は彼の手をすり抜けた。目の前で自分の身に起こったことなのに、何故か現実味がなかった。信じられなくて手を見つめていたけど、視線を上げて彼を見れば「ね?」と云いたげな表情をしていた。
「本当に……」
「ユーレイです」
信じられない者を見る目の私に、彼は状況的に不似合いな程の笑顔でそう云った。緊張感のなくなるほどの笑顔だった。
「いや、そんな明るく云われても……」
「正体バレしたから云いますけどね。死んだって良いコトないッスよ~」
彼は相変わらずな明るい口調で語り始める。私はどう云う態度でいたらいいのか分からず、ただただ彼の話を聞いていた。
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