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「な、な……何、を……」
「あ、聞こえませんでした? オレとデー……」
「聞こえてます! 私が云いたいのは“何で”ってことです!」
「理由……要ります?」
「何で要らないと思ってるんですか!?」
“イミ分かんない”とでも云いたげな拓斗さんの口調と表情に、私は噛み付くようにそう云い返した。
(私、今から死のうとしてるんだよ!?)
呆れてものが云えなくなっている私に、拓斗さんは気にしていないのか言葉を続けた。
「いや~、オレって生前とても陰キャでしてねぇ」
「……は? 誰が?」
「見ての通り、女性と喋るのなんてとてもとても。緊張で言葉も出てきませんよ」
「……どこからツッコんだらいいのよ……」
茶髪で高身長、瞳は大きく整った顔立ち。そしてこれだけ初対面の人とペラペラ喋れるスペックを持っててどこが……と云ってやりたい私だったが……
「まぁ、とにかく。年齢=彼女いない歴なオレなんです。あ、死んでからもモチロン」
「そこはどうでもいいです。てか、だから何で私があなたとデートしなきゃいけないんですか!?」
「今日はもう夜が開けますし、自殺計画は断念でしょう?」
確かに彼の云う通り、もうすぐ夜が明けてしまう。誰の目のない真夜中に実行してしまいたかったのに……
「と云うことは、どうせ死ぬにしても明けて今夜。日中は時間ありますよね?」
ニッコリ笑ってそう云い切る拓斗さん。私は自分でも気づかない間に彼のペースに乗せられていたのだ。
「よ、夜まで寝るわよ」
「昼過ぎには絶対目ぇ覚ましますって」
「う"……」
キッパリと云い切る拓斗さんに、私はぐぅの音も出なかった。
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