ほしいもの味

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 「お二人ともお疲れでしょう。コーヒーブレイクでもいかがですか?」  役員と軽い議論をした後、気を利かした秘書が休憩にコーヒーとそのおやつを持ってきてくれた。  「お気持ちはありがたいですが、融資の件で銀行に行く予定がありますので。」  例の財務担当役員はそう断ると、忙しそうに社長室を後にした。  「あら、残念。でも、私がいただいちゃいますね。あっ、社長はしっかりもらってくださいね。最近特に忙しそうですから。」  「ああ、ありがとう。いただくよ。ちょうど喉も乾いていたしな。」  俺は素直に秘書に感謝の意を述べ、コーヒーブレイクにすることにした。  「これは、…ほしいもか?」  「ええそうです。先日茨城に旅行に行った友達からお土産にもらったんです。食べてみたらおいしかったんで、ぜひ社長にもって」  「そうか…、ありがとうな。」  「もしかして苦手でした?だったらごめんなさい。」  「いや、そんなことないよ。ただちょっとな…」    「ただちょっと?」  俺の意味深な表情に何かを察したのだろう。  察しの良い彼女は、持ち前の屈託のなさを武器に尋ねてくる。  「もし良ければ話してくれませんか?私で良ければですが。」  「おっさんのつまらない話だぞ?それでもいいのか?」  「ええ、もちろんです‼」    
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