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俺は周りには山と田んぼしかないさつまいも農家の長男として生まれた。
大自然といえば聞こえは良いが、ただの田舎だ。
いや、ド田舎といった方が正しいかもしれない。
都会に多くあるようなデパートはもちろん、コンビニさえない。
今となっては自然あふれる山の中で遊んだことはいい思い出だが、特に思い出として印象深いのは母が毎日のように作ってくれたおやつだった。
ほしいもだ。
母が作ってくれたほしいもは、昔ながらの作り方で、当時子供だった俺には岩のように固く感じた。
そして特に甘いわけでもなく、固く干された芋においしさは感じられなかった。
毎日のようにおやつに出たこともあり、俺はほしいもが正直嫌いだった。
いや、嫌いになったというほうが正しいか。
「ほしいもはよく噛めば噛むほど甘くておいしくなるのよ。」
母はよくそう言ったが、とても理解できなかった俺は物心がつく頃にはもうほしいもを食べなくなっていた。
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