ほしいもの味

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 時は流れ、俺は18歳、高校三年生になった。  高校は地元の高校に進学した。  俺の地元は村意識が強く、地元の高校に進学し、その後は地元で就職、または家業を継ぐのが一般的だった。  しかし、俺はそう考えている(たぐい)の人間ではなかった。  いよいよ高校の卒業が間近に迫った頃、俺は両親に自分の進路について切り出した。  「上京する。そして起業したい。」  さつまいも農家を継いでくれるだろうと考えていた両親は驚きを露わにした。  普段寡黙な父もこの時ばかりは驚いたようで、  「何寝ぼけたこと言ってんだ。そんなことできるわけないだろう。」  と相手にもしなかった。  母も同じことを思ったらしく、まるでいさめるように「まあまあ、ほしいもでもお食べ。」といつものように食べもしないほしいもを出してくる。  「本気なんだ。俺は上京して起業したいんだ!」  俺は本気で両親に自分の気持ちを伝えた。  しかし、俺の本気の告白が引き起こしたのは父の激昂だった。  
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