ほしいもの味

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 「ふざけるな‼何のためにお前を地元の高校に進学させたと思ってるんだ!この農家を継がせるためだ!」  今までに見たことのないほどの激昂だった。  普段、「 (めし)、風呂、寝る」しか言わない父とは、全くの別人だった。    父の変貌ぶりに少々、いやかなり面くらった俺だったが、ここで引き下がるわけには行かない。  「地元の高校に進学したのは、俺の意思だ。父さんの意思じゃない。」  俺の言葉が父の怒りの炎に油を注いでいく。  「なんだと⁉誰のおかげで高校に行けていると思ってる?誰のおかげで飯が食えているんだと思ってるんだ!」  俺はこの言葉が大嫌いだった。  早く社会に出たい、早く社会に出て自立したい。  この気持ちは大いにあるが、まだ子供の俺に力はない。  それが本当に悔しかった。  自分にこの言葉を言い返す力がないのが本当に歯がゆかった。  しかし、今日は違った。  俺に現実的な力がないのは百も承知だったが、勝負所だという思いが俺の背中を押した。  「確かに今まで生きてこれたのは、父さんや母さんのおかげだ。でも、これからは違う。俺は自分の力で生きていく。これは俺の人生なんだ!父さんの人生じゃない!」  経済力という絶対の武器に反抗してきた息子に多少は驚いたのか、父は怒りの表情を浮かべながらもじっと黙って次の言葉を模索している。  母は終始何も言わない。  俺が第二の矢を射ようとしたとき、父の口が開く。  「じゃあ、お前はウチの家業を継ぐ気はないんだな?」  俺は少し間を置いてはっきりと答えた。    「ない。」        
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