ほしいもの味

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 「お前がウチを継がなければ、ウチのさつまいもは俺の代で終わってしまう。ウチのさつまいもを待ってる人にさつまいもを届けられなくなる。それでもいいのか?」  「ああ、構わないね。」  結論を急いでいた俺は少々イライラしながらも淡々と答えた。  「お前はウチのさつまいもが好きじゃなかったのか。」  「全く好きじゃないね。というより大嫌いだね!」  父も普段より相当に冷静さを失っていただろうが、俺はそれ以上に冷静さを欠いていたのだろう。  俺は立ち上がり、目の前のほしいもを手にとって告げた。  「こんなほしいもより俺の人生のほうがはるかに大事だ!」  そう言って、俺はほしいもを親の目の前でたたきつけた。  決別には十分だった。  父の肩がわなわなと震えるのが分かった。  母はまるで固まったかのように目の前に転がったほしいもから目を離さない。  「出ていけ。」  父が小さく、低い声で言った。  そして、それはすぐに大きくなる。  「出ていけ!もうお前は俺の子なんかじゃない!赤の他人だ!二度とこの家の敷居をまたぐな!!」  ほしいもに釘付けだった母も、ようやく顔を上げて俺を見た。  悲しそうな顔だった。  後に引けなくなった俺はすぐさま荷物をまとめた。  何度も母の呼び止める声がしたが、俺は振り向かなかった。  そして去り際に「お世話になりました。」と一言だけ残し家を後にした。      
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