3人が本棚に入れています
本棚に追加
「とまあ、これがつまらないおっさんの身の上話さ。」
俺は秘書に30年前自分に起きたことを話した。
「上京してからはご両親とはお会いしてないんですか?」
彼女は今にも泣きそうな顔で聞いてくる。
「ああ、一度も会ってないな。行先は伝えなかったし、おそらく俺がどこにいるかも知らないだろう。まあ、今となっては生きているかすら怪しいけどな。」
「そんな…悲しいこと言わないでくださいよ。」
彼女はもう当事者と言わんばかりの悲しい表情を浮かべている。
「いいんだよ。もう昔のことだからさ。」
「でも…、じゃあ一度ご帰郷なさって見てはいかがですか?きっとご両親も喜ぶと思いますよ。」
彼女はそう提案したが、俺は答えなかった。
代わりに、「じゃあ、仕事始めるか。予定も詰まってるしな。」と話を切り上げた。
彼女は不服そうな顔をしたが、これ以上話すべきではないと判断したのか、この後の予定を俺に告げ、社長室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!