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「平林」そのあらすじは
商家のこぞうの定吉は、隣町の平河町、医師の
「平林(ひらばやし)」邸をたずね、手紙を届け、
その返事をもらって来るよう、店主から頼まれる。
定吉は、行き先を忘れないように口の中で
「ヒラバヤシ、ヒラバヤシ」と繰り返しながら
歩くが、結局忘れてしまう。定吉は読み方を
思い出すため、手紙に書かれた宛先の「平林」
という名前を読もうとするが、
そもそも字を読むことができなかった
ことに気づく。そこで、通りがかった人に、
「平林」の読み方をたずねることにする。
最初にたずねられた人は「それはタイラバヤシだ」
と答える。
安心した定吉は、別の人に
「タイラバヤシさんのお宅は知りませんか?」
と聞くが、何となく違う気がしたので
その人に手紙を見せて何と読むのか聞く
その人は「『平』の字はヒラと読み、
『林』の字はリンと読む。これはヒラリンだろう」
と定吉に教える。何か違うと思った定吉は
また別の人に
「ヒラリンさんのお宅は知りませんか?」と聞き、
手紙を見せて、読み方を聞く。
今度は「イチハチジュウノモクモク
(一八十の木木)と読むのだ」
と定吉に教える。
さらに別の人が同じように定吉に問われると、
「ヒトツトヤッツデトッキッキ
(一つと八つで十っ木っ木)だ」という。
困った定吉は、教えられた読み方を全部
つなげて読み上げ、周囲の反応を待つことにする。
読み上げはやがてリズミカルになり、
歌のようになっていく。
「タイラバヤシかヒラリンか、
イチハチジュウノモ~クモク、
ヒトツトヤッツデトッキッキ~」
やがて定吉の周りに人だかりができるのだが
そこを通りがかった、定吉と顔見知りの職人の
男が駆け寄ると、定吉は泣きながら
「お使いの行き先がわからなくなった」
と職人に訴える。職人が
「その手紙はどこに届けるのだ?」と定吉に聞くと、
「はい、平林さんのところです」
とまあこのような噺なのだが、それを
一字一句、師匠そっくりに語る、
これには、母親の、なつも驚いて師匠に
教えたのだ。
それを、師匠の笑観がおゆきに
「平林を聞かせてくれ」とたのんだ。
すると、おゆきは扇子を師匠から取り上げ
堂々と座布団に座り、
『まいど、ばかばかしいお笑いを』
とおゆきが舌っ足らずの口調で噺だした。
「定吉(さだきち)や!定吉!」
「はーい! 何ですか、旦那様」
「あー、お前、済まないけどな、この手紙をなぁ
橋を渡った平河町(ひらかわちょう)の
平林(ひらばやし)さんの処へ 届けておくれ」
「あっ、そうですか、分かりました。
きょうは、お風呂沸かす番なんです。
もうすぐ沸きますので沸いたら行ってきます」
「あ~、そうか、そうか。
お前がお風呂番だったか。ご苦労だったな。
それは、他の者に見させておくからな、
急ぎだから、その手紙を先に届けてきておくれ」
「あー、そうですか、分かりました。
じゃあ、行ってきます。この手紙何処に
届けるんですか?」
「だから、平河町の平林さんだぞ!大丈夫か?」
「あ、分かりました。お風呂の方は
お願いします、グラグラ煮え立って、
後からうめると奥様に怒られるんです。
よく言って置いてくださいね」
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