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西暦2105年。人類は意識の電脳化に成功し、意識を電脳ネットワークに繋げ、自身はエッグと呼ばれる完全生命維持装置の中でAIロボットを操作していた。その割合、全人口の約83%。ほとんどの人間が自身を電脳化させ、自分の代わりとなる人間そっくりに作られたAIロボットをエッグの中から操作して生活している。
学校も仕事も家事も子育ても全てエッグの中から行えることから、非常に安全だと謳われ、申請さえ通れば簡単にできる電脳化は危険な仕事を担う者達を筆頭に、たちまち人類の流行りとなり広がっていった。
その人それぞれに特注で与えられるAIロボットは、見た目や身長などをアバターのように好きに変えることができたため、自身の見た目に自信のない者や身体に障害を持っている者からの需要も高く、世論としての受け入れ態勢も自然と整っていった。これには、エッグの中から本物の人間が操作していることも起因しており、実際の人間像が身近であることが本来のAIロボットよりもさらに安心を引き連れてきているのだとテレビのコメンテーターは語る。そしてそのコメンテーターも、自身を電脳化させている一人だった。
「今現在、人類は既に何が本物で何がそうでないか、その長年の課題に答えを導き出すことに成功したのです。身体から切り離された意識とAIロボットのその身体、精神がある限りそのどちらもが絶対的に本物、なのだと」
そう、本物は語る。
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