たまごから

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 ある日、平和だった街に大きく不穏な音が響き渡った。全自動化された車しか走っていない現代では交通事故など珍しく滅多に起こらない。そのためここまでの音を聞くのは皆が久しかった。ざわめく人間もとい、AIロボットたち。エッグで操作する人間たちは必死になって原因を探し、そしてその全貌が明らかになるにつれ、自身を電脳化していたことに安堵した。  音の原因は大規模な爆発事故だった。AIロボット廃棄施設の関連施設、それが今回爆発したAIロボット回収施設だ。携帯会社と提携しているロボット会社が多いことから、回収施設も街中(まちなか)にあることが多いが、AIロボットの充電池などを扱うため、取り扱いを間違えると今回のような爆発を引き起こしてしまう。AIロボットが普及し始めたばかりの頃には多くあった事故だが、改善案や法案が整備されそれも少なくなっていた。そんな中での、久しい爆音。そして、規模は以前よりも大きなものだった。  大きく倒壊し上半分が無くなった回収施設の下にたまたまいたリカとタクミは、一瞬にして崩れてきた瓦礫とゴミに巻き込まれた。幸いタクミの操るAIロボットの方は無事だったが、生身の人間であるリカはうつ伏せになった状態で上から瓦礫に押しつぶされる形となって埋もれてしまっていた。  その頃。爆発場所からはそう遠くない場所、そしてさらにそのエッグの中からAIロボットを操作していたタクミは、瓦礫の下敷きになっているリカを助け出そうとエッグの中で必死に藻掻いていた。リカにも電脳化をもっと勧めていれば、そう酷く後悔した。リカはタクミの電脳化にこそ口出しはしなかったが、自身の電脳化には消極的だった。頑なに拒否していたリカを無理やりに電脳化させるようなことはできず、生身の人間とAIロボットとしての交際をこの1年間続けてきた。リカと付き合いだしたのは2年前のことで、生身での付き合いとAIロボットとしての付き合いがちょうど半分になる日、それが今日だった。そしてそんな貴重な記念日デートの最中(さなか)の出来事。 「リカ、リカっ!」 「タクちゃん……」  辛うじて隙間に挟まり一命は取り留めたリカだったが、いつ瓦礫が崩れるかは分からず事は一刻を争っていた。
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