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「本物を呼んでください」と流暢な言葉でタクミを呼んだAIロボットの冷静な人格はノイズによって生まれたもの、その一瞬はすぐに終わりを告げ、その声の意味を理解する頃には、その人格はとうに消えていた。そしてその代わりに、新しい人格とも言えるぎくしゃくとした「ポンコツな」人格が作り上げられ、それになっていた。
そんなポンコツロボットは、あからさまにおかしくなった回路をポンコツなりに精一杯稼働させてリカを助ける為のあらゆる可能性を探す。だが。
「リカさん!強制脱出しましょう!腕を片方引きちぎればこの隙間からでも出られます!」
「や、やめてそれは痛いと思う……から……」
無理に腕を引っ張られそうになったリカは、こんな状況であってもつい笑ってしまう。今までの一年間ずっと愛してきたリカにとってのタクミが、ただのポンコツに成り下がってしまっていること、それがただただおかしくて仕方なかった。
「あなた、今はタクちゃんじゃないのよね?」
「はい!タクミさんから学習をした知識だけで動いている不完全なAIロボットです。なにか間違えてしまいましたか?」
「人の腕は引きちぎれないし、それはとっても痛いことだからしちゃダメよ」
「理解しました!それでは少しお待ちください……検索します……これならどうですか?肩関節を外す方法が見つかりました」
「それは……出来なくはないけどやっぱり痛いかな」
なんの解決方法も導き出せないロボットだったが、それでもリカの意識を繋いでいるのは紛れもなくこのポンコツロボットだった。
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