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でもそうしたら。こいつは。
横目で見れば心底愛おしそうにぬいぐるみを抱きしめるポンコツロボット。優しく丁寧に、とん、とん、と眠りに誘っている。
リンクが切られ使用済みになったAIロボットは所持者が特別な届けを出さない限り廃棄になるのが通常だ。
こいつはもう俺じゃない。でも、こいつはリカを助けた。それなら。
「なあリカ」
「なあに?タクちゃん」
「俺……」
「いいよ」
「え?」
「多分、考えてること合ってると思うから、いいよ」
何も言わずともに理解してくれるリカが心強かった。電脳化を辞めて、こいつを自分の所持AIロボットとして申請して一緒に暮らそう、そうタクミは決意する。
「おーい」
「はい!タクミさん!リカさん!」
「3人で暮らすか?」
「ええ!?素敵ですね!やったー!やったー!」
無邪気に喜ぶポンコツ──こいつには、教えることがまだまだありそうだ、そうタクミは思った。まずは、名前からだな。
後は申請して受理されれば正式な家族になれるけど、そう思って手首に付けた端末を弄ろうとするタクミの手をリカが止めた。
「じゃーん。もうやってあります」
「あのなあ……一応怪我人なんだから」
「へへ」
「でもありがとう」
「ううん。こちらこそだよ」
救急車へと乗せられていくリカを見送るタクミはふと思いついたことを口にする。
「怪我が治ったらなにかしたいことある?」
「タクミの手料理が食べたいな」
タクミは自分の痩せ細った手を見て自信なさげに苦笑いをした。
「……失敗したらあいつに食べてもらうことにするよ」
「なんですかー!?呼びましたか!?」
タクミとリカは顔を突き合わせてにひひ、と笑った。
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