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転生
リフォームとは、改心する、改正する、作り直す、の意味らしい。
英語の授業で、そう習った中学生の直は、「なるほど」と思った。
直は自分のことを、ちょっとしたワルだと思っている。
まあ、中学生のちょっとしたワルだから、そんなに悪くはないのだが。
信号で青が点滅しているのに渡ってしまう。
お年寄りが重たい荷物を持っているのに、見て見ぬ振りをしてしまう。
スーパーで落ちてる商品を見つけても、見て見ぬ振りをして元に戻してあげない。
それくらいの悪さをするくらいだ。
そんな自分を直は「俺ってちょっとした悪だよな」と真面目に思っていたのだ。
そんな事を言う直のことを、友人たちも「お前、凄い悪だな」と冗談で言っていた。
なので、直は本当に自分のことをちょっとした不良だと思っていたのだ。ある意味、ちょっとした中二病なのだ。
「よし、俺もリフォームで改心するか」
そう思った日に、トラックに轢かれそうな猫を助けようとして、直はトラックとの事故で死亡した。
目を覚ますと、直は赤ん坊になっていた。
しかし、思考は中学生だ。
しかも、日本ではないらしい。
(これ、異世界転生ってやつなのか?)
頭脳は中学生なのに、身体は赤ちゃん。
こっちの世界で直はナオスと名付けられた。
偶然か必然か、同じ読み方だった。
そして、色んな葛藤や苦労や悩みがありながらも、ナオスは異世界で明日には12歳になる。
直が転生した世界では、12歳になると特殊なスキルを授かる事があるのだ。
教会とかでガチャをして、当たりが出るとスキルを授かるのだ。
その確率は100人に1人。
スキルも凄いのからショボいスキルまで色々なのだが。
ナオスの生まれた家は普通の家庭だった。
ナオスは長男で、3つ下に双子の妹と弟がいる。
「兄ちゃん、スキルが当たるといいね」
「どうかな、俺って特に良いこととかしてないしな」
「あー、そうだよね」
「まあな」
「悪いこともしないけどね」
「まあな」
「お兄ちゃん、若いのに無気力だもんね」
「まあ、な」
(俺、前世も含めると24歳なんだけど。まあ、それでも若いのか)
トラックに轢かれそうになっていた猫を助けようとして、自分がトラックに轢かれて死んでしまったナオス。
転生したナオスは、「良いことをしても、ろくな事が無いな。かと言って悪いことをすると怒られる。良くも悪くも何もしないで普通にしておくか」と思って、そのとおりに生きてきたのだ。
「でも、お兄ちゃん。頑張ってね」
「いや、ガチャは頑張って当たる物ではないし」
「お兄ちゃん!」
「ん?」
「何事も気合だよ!」
(お前は、どっかのプロレスラーかよ)と思うナオス。
「まあ、気合は大事だよな」
「うん。『気合だー! 3、2、1、ダー!』と言ってガチャを回したらいいよ」
(だから、お前はプロレスラーかよ)
「まあ、それが言える雰囲気ならやってみるよ」
「うん」
「兄ちゃん、凄いスキルだったらさ、お金を稼いでお小遣いをお願い」
「あ! 私にも!」
「まあ、儲けれたらな」
「「うん」」
翌日、ナオスは家族たちと教会へ行った。ガチャを回すのだ。
そのガチャは12歳にしか回せないし、その仕組みは誰も知らない。
ある時に、突然と世界中の各地にガチャ装置が出現したらしいのだ。
ナオスの住む国では教会に置かれていることが多い。
個人で所有している人もいて、ガチャを回すのにお金を取る人もいるらしい。教会でも寄付金を取られるのだが。
ナオスの住む町では教会がガチャ装置を所有している。
12歳の誕生日にガチャをする人が多いので、ナオスも誕生日にガチャをすることにしたのだ。
ガチャで出てくる白い玉はハズレ。赤い玉だと当たり。
(凄いスキルだと色々と期待されたりして面倒だしな。凄いスキルだったとしても過小申告しとこう)
そう思いながらナオスはガチャを回した。
「気合だー! 3、2、1、ダー!」とは叫ばなかった。そんな空気では無かったのだ。
カコン
赤い玉が出てきた。
「「「おおっ!」」」
思わず驚きの声を出すギャラリーたち。ナオスも声が出た。
(福引きのガチャなら、鐘がなるところだよな)
「おめでとう、ナオスくん」
「あ、ありがとうございます」
神父さんや他の人に声をかけられた。
「ナオス、やったな」
「まあ、うん」
「兄ちゃん、どんなスキル?」
「えっと……ステータスを見てみるよ」
「うん」
「お兄ちゃん、ワクワクするね!」
「そうだな」
ナオスは赤い玉を手に取った。その瞬間に赤い玉は消えた。ナオスの身体の中に吸収されたのだ。
吸収された赤い玉がスキルになる。そして、スキルを得ると自分のステータスが見えるようになる。他人には見えない。
ステータスは身体に出せるので、ナオスは掌に出した。
スキル
リフォーム Lv.1
少し壊れた物を少し直せる
(リフォーム? 少し壊れた物を少し直せる? うーん……微妙だな)と思うナオスだった。
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