帰宅

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ナオスの初出勤日がコマリとマリオの入学式だった。 仕事が終わり帰宅したナオス。 コマリとマリオも帰宅していたので、ナオスは学校の事を聞いてみた。 「マリオ、何事もなかったか?」 「あ、うん」 「2000円やるから本当の事を言ってくれ」 「うん。コマリが学校長をビンタして」 「あー! 言わない約束なのに!」 「コマリは1000円。兄さんは2000円だから」 「コマリ」 「違うって」 「何がだ?」 「校長先生がビンタしていいって言ったんだよ」 「本当か、マリオ」 「まあ、流れ的には」 「そんな学校長がいるんだな」 「いたんだよ」 「他には」 「コマリの担任がコマリをボコボコに殴ってた」 「は?」 「コマリ、まったくの無傷だけど」 「まあ、だろうな」 コマリとマリオだけでなく、両親にも無痛と身体自動回復を付与しているのだ。 「兄さん」 「ん?」 「僕たち家族に何かしたよね」 「何かとは」 「兄さんにマッサージしてもらってから、何をしても痛くないし、疲れないし古傷も消えてるし」 「さあ、俺は知らんけど」 「ありがとう、兄さん」 「俺は特に何もしてないからな」 「そうだね」 「そうだよ、マリオ。お兄ちゃんはマッサージが上手いだけのお兄ちゃんだよ」 「いや、コマリ。俺はマッサージ以外にも……特に特技はないか」 「うん」 「兄さんこそ、初仕事はどうだった?」 「俺のほうは……まあ、何とかな」 「どんな仕事をしたの?」 「そうだな」 (ほとんど、所長と話をしたり殴られるか弁当を食べてるかだったな) 「大変だった?」 「大変と言えば大変だったかもな」 「仕事って大変なんだね」 「まあな」 こっちの世界は電気や電気製品とかはない。 しかし、転生前は中学1年生だったナオス。 天才とかではなかったので、こっちの世界で金儲けできるような、産業革命ができるような知識はそれほど持ってない。 持っていたとしても、そもそも無気力なナオスなので、金儲けや産業革命などやる気はないのだが。 父親も仕事から帰ってきたので、夕食になった。 「父さん、初仕事はどうだった」 「何も分からないからな。教えてもらうだけだった」 「どんな事を?」 「国の仕事だから、守秘義務があって教えれない」 「まさか!」 「え?」 「暗殺部隊所属?」 「おいおい、コマリ。そんな部隊が本当にあるとしても父さんは暗殺なんて無理だぞ」 「そうよね」 「そうだよな」 「だけど、家族にも言えない仕事って、だいたいは暗殺者か、やばい仕事だよ」 「まあ、そうかもしれんが、父さんの仕事は事務職でやばくないから」 「私もさ」 「ん?」 「勇者だから、学校を卒業して上級国家公務員になったら暗殺部隊所属になるのかな?」 「そうか。暗殺部隊所属とか分からんが、国を守る仕事だから敵を殺す事もあるのかもな」 「私、人殺しは嫌だなー」 「嫌なら上級国家公務員を断ればいいだろ」 「断ったら、英校の学費は取られるよ」 「そうなのか?」 「うん。1000万円だってさ」 「1000万円……父さんはそんな話は聞いてないぞ」 「母さんもよ」 「今日、説明された」 「王都英才学校。無償と言ってたけど、タダより怖いものはないな」 「だよね、兄さん」 「まったく」 後出しジャンケンみたいだなと思うナオス。 「どっちにしても、レベル5以上にならないと学費は借金だよ」 「コマリ、そうなのか?」 「うん。10年間で返せって」 「それだと……利子がないとしても、毎月8万円くらいかな」 「だね」 「まあ、スキル持ちなら返せない額ではないな」 「先生もそう言ってた」 「ちなみに、払わなかったらどうなるんだろうな」 「さあ?」 「逮捕されると思うよ」 「まあ、国からの借金だもんな」 「うん。無理やりな借金だけどね」 「じゃあ、どっちにしてもダンジョンで稼いだら良いかもな」 「あ、そうだよ。ダンジョンなら人は殺さなくていいもんね」 「いや、仲間割れやお宝の横取りとかで、たまに殺人事件はあるらしいぞ」 「え! そんなので人を殺すって、人間って馬鹿だね」 「まあ、一部の人間は馬鹿だな」 こっちの世界には、いわゆるダンジョンが存在する。 一般人も勝手に入っていいが、だいたいの一般人はすぐに死ぬ。 攻撃系や防御系とかのスキルを持ってないと、ダンジョンでは瞬殺されるのだ。 身体自動回復になっているナオスだが、(身体自動回復といえども、瞬殺されたら即死で死ぬんだろうか?)と、考えた。 (人間としての生物の寿命限界が来たら、それは当たり前に死ぬんだろうけど。それまでは胴体が真っ二つになっても頭が潰れても身体自動回復するんだろうか) まあ、その時にならないと分からないか。とりあえずは死ぬとしても痛くないし。と、考えるのをやめるナオスだった。
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