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石
夜になり外は暗くなった。部屋の中で灯石をボーッと見ているナオス。
転生した世界では電気の灯りはないのだが、暗くなると光る石が存在する。
ダンジョン産の石で、その名はそのまんまの「灯石」
石の色はオレンジ色。
蛍光灯やLEDみたいには明るくないが、普通に暮らすには困らない明るさだ。
その灯石を紐で縛って天井から吊るして、部屋の中の灯にしている。
他にも、ダンジョン産の不思議な石はある。
トイレに入れておくと、排泄物や紙を分解消臭してくれる白い石もある。その名は「消石」
ザラザラした硬い物で擦ると火がつく赤い「火石」
汚い水とかも飲める水に変えてくれる青色の「水石」
滅多に取れないが、細かくして飲むと病気が治ったりする黄色の「医石」
金色の石は金貨に、銀色の石は銀貨に、銅色の石は銅貨にする。
灰色の石は他の材料を混ぜることで、鉄やステンレス、アルミとか色んな金属になる。
ダンジョン産の石で世界が回っているようなものだ。
そんなお宝がたくさんのダンジョンだが、石の採取は簡単ではない。簡単なら取り放題なのなのだが。
ダンジョンには、ゴーレムと呼ばれる石の怪物がうようよいるのだ。
地球で物語に出てくるゴーレムは泥人形らしいが、こっちの世界のゴーレムは硬い石。
ゴーレムはいろんな物を食べる。食べると当然ながら排泄をする。そして、そのゴーレムの排泄物がダンジョン産の石なのだ。
(あの灯石も、元はゴーレムのウンコなんだよな)と思いながら、ナオスは灯石を見ているのだ。
もちろんなのだが、ゴーレムの近くにゴーレムの排泄物があるわけで。
その排泄物がダンジョン産の石なわけで。
ダンジョン産の石、縮めて「ダン石」を採取するには、ゴーレムを倒す必要がある。
ゴーレムは強い。一般人が素手で倒すのは、ほとんど不可能だ。
ゴーレムは石なのに、その動きは凄く速い。
ナオスはゴーレムの動きなんて見たことがないのだが、聞いた話から推測して、おそらくは100メートルを10秒を切る速さで走ると思われる。
しかも、ゴーレムのパンチやキックは、一般人では目にも留まらぬ速さらしい。
なので、一般人がダンジョンに入ることはめったにない。
入るのは、特別に訓練した人間やスキル持ちくらいだ。
その人間たちを人は「石ハンター」と呼んでいる。
ゴーレムは自分の排泄物の石を自分で食べてしまう。
なので、ダンジョンに入った石ハンターは、狙ったゴーレムを常に監視し尾行して、排泄をした瞬間にゴーレムを倒してゴーレムの排泄物をゲットしないといけないのだ。
排泄したばかりの排泄物だが、石なのでホカホカでもないし臭くもない。
倒されたゴーレムは動かぬ岩になる。
その岩を他のゴーレムが食べる。そして、そのゴーレムは排泄をする。
その排泄物を石ハンターたちがゲットする。
それがダンジョンでの日常なのだ。
ゴーレムが何の石を排泄するかはランダムなので、石の種類を狙ってゲットするのは不可能。
苦労してゲットしたゴーレムの排泄物の石が安い時も多いのだ。
逆に運がいいと貴重な石ばかりをゲットする時もある。
(コマリ、ダンジョンの石ハンターになるとか言ってたな。灯石とか身内価格で安く売ってもらうか)
そんな事を考えるナオスだった。
そして月日は流れ、コマリとマリオは13歳の誕生日がきた。
そう、スキルアップチャンスのチャレンジガチャができるのだ。
結果は2人ともレベル2になった。
「2人とも同じで、まあ、良かったかもな」
「うん、お兄ちゃん」
「そうだね、兄さん」
「マリオのほうがレベル3とかだったら、コマリはずっと文句を言うだろうしな」
「そうそう」
「言わないよ」
「いや、言うだろ」
「うーん?」
「逆に、コマリのほうがレベル3だったらずっと自慢するだろうね」
「そうだな」
「しないよ」
「するだろ」
「うーん?」
「でも、最終的にレベル3にはなりたいけど」
「あ、それだね」
スキルを持てるのは100人に1人の確率なのだが、世間的にはレベル3以上が「使えるスキル持ちだね」思われている。
レベル1と2のスキル持ちはアマチュアで、レベル3以上がプロみたいな感覚だ。
「まあ、1回目のチャレンジガチャで当たりだった人は、だいたいは2回目も当たってレベルアップするらしいから、大丈夫だろ」
「でも、お兄ちゃんは2回目も3回目も外したよね」
「まあな」
「兄さん、1回目でレベル3で良かったね」
「まあな」
「でもさ」
「ん?」
「英校はレベル5以上じゃないと卒業認定されないって言われたけど、スキルって自己申告なんだけど。だったら、卒業認定してほしい人は、みんな『レベル5です』とか嘘を言うよね」
「コマリ、聞いてないのか?」
「何を?」
「英校にはスキル測定器があるのを」
「「え?」」
(そんな物があるのか)
「俺はユリー先生から教えてもらったぞ」
「うーん? 覚えてない」
(まあ、俺は英校生じゃないからな。スキル測定器とか関係ないか)とナオスは思った。
スキル測定器は、国家予算の1年分を使って作ったらしい。
作動させるにも、1回、1億円が必要らしいのだ。
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